タイ前首相国外逃亡の全容判明 排除の論理で大きな転換期 (1/3ページ)

海の向こう側に見えるチャーン島に向かうフェリーの桟橋=7月下旬、タイ南東部トラート県(小堀晋一撮影)
海の向こう側に見えるチャーン島に向かうフェリーの桟橋=7月下旬、タイ南東部トラート県(小堀晋一撮影)【拡大】

  • インラック前首相(左)と兄のタクシン元首相(前首相が今年7月に公開した自身のフェイスブックから)

 2014年5月の軍事クーデターで政権を追われたタイのインラック・チナワット前首相の国外逃亡の全容が次第に明らかになりつつある。当初は東部サケーオ県アランヤプラテートにあるカンボジア国境で現職警察幹部の協力で国境を越えたとされたが、実際はトラート県チャーン島にいた協力者によって沿岸を伝い、あるいは船によってカンボジア入りした可能性が高まっている。背景には、前首相が進めた「コメ担保融資制度」をめぐる刑事裁判で有罪判決が濃厚となったためとされ、08年から国外で逃亡生活を続ける兄のタクシン元首相を頼るしかなかったとの見方が広がっている。

 島からひっそり脱出

 インラック前首相をめぐっては、政権時に進めた事実上のコメの買い取り策「コメ担保融資制度」をめぐる刑事裁判で最高裁政治犯罪部が8月25日に判決を言い渡すことになっていた。すでに15年に国会の弾劾手続きによって5年間の公民権停止とされた前首相が、今度は最長で10年の有罪判決を受ける可能性が取り沙汰されていた。

 タクシン派側はタクシン元首相自らが精鋭の弁護団を編成、弁護活動にあたったが、公判を2年程度引き延ばすことに成功しただけで、情勢は厳しさが伝えられていた。こうしたことからインラック前首相が勝訴は困難と判断し、国外脱出を決意したものとみられている。判決は延期の末、9月27日に言い渡しが行われ、禁錮5年の実刑判決が下された。

 関係者の証言を総合すると、インラック前首相は判決予定2日前の23日夕、乗用車で南東部トラート県チャーン島周辺に向かった。GPS(衛星利用測位システム)による軍と警察の追跡ができないよう、日常使用しているメルセデス製の車両は使わず、トヨタ製の車が利用された。携帯電話も電源を切った上で、携行しなかったという。

後継者にも不正疑惑