本来、薬の本格的使用は、安全性の確認が不可欠。WHOがそれでも「苦渋の選択」に踏み切った背景には、実際の感染・死者数が、現場で把握できている数字を大きく上回り「状況ははるかに深刻」(国連関係者)という危機感がある。
WHOの容認前、治療薬を投与しないという判断をした医師らもいる。
米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、国境なき医師団(MSF)は7月下旬、シエラレオネで活動中にエボラ熱に感染した男性医師が亡くなる直前、ZMappの投与を検討したが、断念。声明で「未承認の薬を試すのは非常に難しい決断だ」と振り返った。
副作用への懸念もあったが、未承認薬を投与して死亡した場合、「アフリカ人をモルモットにした」という強い反発が起きる可能性が十分あった。そうなれば、国際非政府組織(NGO)などによる医療支援はさらに困難になる。
届いたのは3人分
WHOのキーニー事務局長補は12日の会見で、現段階で十分な量を供給できる治療薬やワクチンはないと指摘。使用容認の狙いは開発促進だと述べ、「エボラ熱がすぐに治療できるという誤った希望を与えないことが重要だ」と強調した。