しなやかな声が一つ一つの言葉に秘められた深い思いをすくい取り、したたるような情趣を運んでくる。光り輝くような鮮やかな記憶も、かすかな風のそよぎに胸をふるわせたほのかな思い出も、精妙な響きに織り込んで語りかける。
「ジャンルやスタイルにとらわれることなく音楽と接し、心からすばらしいと感じる作品と向き合ってきました。熱いものがあふれ、メッセージが伝わってくる音楽を愛しています。本当にすばらしい音楽は、作品の中で示しているものを超え、バックボーンにあるものや、作った人の人生そのものが添えられて心を揺さぶります」
東京二期会がイタリアを代表するパルマ王立歌劇場と提携し、2月に開催したオペラ「リゴレット」で主役の一人、マントバ公爵を好演し、耳の肥えた聴衆から喝采を浴びた。上演時間が3時間に迫る大作は、全3幕のすべてが公爵の歌を起点に動き出し、壮麗な音楽がうねるようなドラマを生む。公爵が歌う浮気な「女心の歌」はイタリア・オペラの王、ベルディの一大出世作で広く親しまれている。