あがいて、最後に差す光
本作では、野口のクラスメートや担任教師らが、各話の主人公となっていく。ここを出たいと願う者、一旦は出て、再び戻ってきた者-。年齢や状況はさまざまだが、みな「故郷にとらわれている」者たちだ。「閉じ込められている人を書きたいんです。それは故郷でなくても、世間の目だったり、家族だったり…。不自由さの中であがいている人たちです。生まれた場所や血のつながりは、捨てようとしても捨てられない。それが分かっているからこそ、書きたい。不自由さから抜け出せるか分からないけれど、あがいてあがいて、最後に差す光のようなものを描いていければと思っています」
自身は「(故郷には)年に2回くらい帰ります。悪口言うんだけれど、それでも帰ってしまいますね(笑)」。捨てたいけれど、捨てられない。キライだけれど、それだけじゃない。それが、ふるさと。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■こざわ・たまこ 1986年、福島県南相馬市生まれ。専修大学文学部卒。2012年『僕の災い』で第11回『女による女のためのR-18文学賞』読者賞を受賞し、デビュー。本書が初めての単行本となる。
「負け逃げ」(こざわたまこ著/新潮社、1728円)