本書では、バートンの生涯を虚構を交えながら3部構成でつづる。第1部ではインドに赴任した大英帝国の軍人、リチャード・バートンの若き日が描かれる。語学の天才であるバートンは、貪欲にさまざまな言語を学んでいく。転属先のシンド州ではイスラム教に傾倒し、スパイ活動に身を投じる。
第2部では、バートンはインド人イスラム教徒に変装して、出身も身分も隠して、メッカ巡礼を達成するまでを。第3部では、イギリス人探検家とともにナイル川の源流を探す旅の過程を描く。
「バートンを駆り立てたのは、帝国主義的な政治に対するフラストレーションと膨大な好奇心。毎朝、目を覚ますと、新しいものを見たいと思うタイプです」
特徴的なのは、いずれもバートン本人の視点と交互して、インド人召使いや道案内などによって語られることだ。「外からの目線ではなく、『地元の人間』が語るというアイデアを思いついたときから、一気に面白くなりました。もちろん、彼らの社会的階層もバックグラウンドもそれぞれ違う。困難な作業ではありましたが、私は小説を書くことは、不可能に挑戦することだと思っています。限界を超えることが、私の原動力なのです」