【アートクルーズ】
写真家、東松照明にまつわる企画が相継いでいる。まず、長く絶版のまま入手困難だった代表作『太陽の鉛筆』が待望の復刻、再刊された。ただし、ひと口に復刻と言っても、実に40年前の写真集である。簡単なことではない。編集にあたっては、所在が不明のものや劣化による10枚を除き、原ネガを最新の技術でスキャン。ここから原データを作成し、デジタル・プリントとして出力。今回の写真集も、これを原版として印刷されている。しかし東松は故人だ。その是非の判断はむずかしい。このため編纂(へんさん)には長らく東松の写真と伴走してきた写真批評家=伊藤俊治、文化人類学者=今福龍太が当たり、単なる再現ではない、晩年の東松の意図にかなうかぎり沿うよう刷新されている。