原発支持派は「より安全で豊かな生活ができる」と言い、反対派は「危険であり有害」と主張します。物事はそれほど単純ではなく、原発は世界の情勢とも連動している微妙な側面もあります。原発から即座に撤退すべきとの主張には簡単に飛びつかず、慎重にすべきだと思います。
◇
□日本エネルギー経済研究所特別顧問 田中伸男氏
■原子力は準国産エネルギー
資源の少ない日本は多様なエネルギー源を確保しなければなりません。
原発が停止している現在は95%ですが、再稼働したとしても化石燃料への依存率は2035年でも75%と高い水準のままです。中国、インドがエネルギー需要を拡大させ、中東や東南アジアなども国内の経済成長で輸出余力が低下します。どこから資源を安定的に確保し、安全に輸送するかが非常に重要です。
短期的視点からは中東危機への懸念が大きい。ホルムズ海峡は世界の原油消費の2割、日本の輸入量の85%が通過し、備蓄量の少ない液化天然ガス(LNG)も2割に及びます。原発が止まった状態で電力需要が逼迫(ひっぱく)し、老朽化が進む火力発電は故障のリスクが高い。原油価格が2倍になれば日本の経常収支は大幅な赤字に転落し、中東の一国にLNGを依存している電力会社の地域はすぐ計画停電となってしまいます。
中国や欧州連合(EU)諸国ではパイプラインによる石油や天然ガスの輸送、電力供給のグリッド構築構想などの政策が展開され、世界でエネルギーの集団的安全保障の体制づくりが進められています。日本がロシアからガスを買うにしてもパイプライン敷設を検討するなど今すぐ考えるべき事柄はいくつもあります。