東京電力富津火力発電所のLNG基地。LNGの輸入増が貿易収支の赤字を広げている=千葉県富津市(小野淳一撮影)【拡大】
原子力規制委員会は再稼働に向け安全審査を実施しているが、実際の稼働時期は見通せておらず、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は1月の会見で、「電気料金の再値上げは、勢いがつきつつある日本経済に好ましくない」と原発の早期稼働を訴えた。新日鉄住金グループの電炉メーカー、新北海鋼業(北海道小樽市)のように、電気料金値上げによるコスト増を理由に自主廃業する企業も出ている。
原発ゼロが続くと、日本経済には、どのような影響が及ぶのか。
電力事業の研究を手がける電力中央研究所(東京都千代田区)は、原発ゼロが続いた場合の国内総生産(GDP)を試算している。原発が再稼働し、東日本大震災前の平成22年の半分まで原子力発電量が戻ったとする「標準ケース」と比べると、実質GDPの成長率は42年まで年平均で0.06%下ぶれするという。
成長率の落ち込みはわずかとも思えるが、累積では多大な影響が生じる。GDPの累計損失額は、42年には86兆円に達し、日本の一般会計予算(約95兆円)に迫るGDPが吹き飛ぶ計算だ。
電中研の浜潟純大(すみお)主任研究員は「GDPは国力をはかる指標。下ぶれは、国力が押し下げられていることを示す」と指摘する。
累計損失額の内訳をみると、最も大きいのは「消費」の下ぶれによる影響で、42年時点で累計41兆円に及ぶ。電気料金の値上げで消費者が節約行動に走るほか、コスト増で企業が雇用や賃金を減らし、消費が萎縮する。
企業の「投資」も累計で19兆7000億円下ぶれする。液化天然ガス(LNG)など火力発電用燃料を中心に、「輸入」が累計16兆8000億円まで膨らむこともGDPを下押しする。
浜潟主任研究員は「試算に織り込んでいない原発廃炉の費用などが電気料金に上乗せされれば、GDPはさらに落ち込む」としている。