フィリピン、中国と6年間の経済協力計画 領有権より投資・貿易優先

 フィリピンは、中国との経済的な結びつきを強化するため、6年間の経済協力計画を策定する。投資や貿易などの円滑な推進を優先し、南シナ海の領有権をめぐる争いについては中心的な議題としない考えだ。現地紙マニラ・タイムズなどが報じた。

 在フィリピン中国大使館の関係筋によると、この計画は2017~22年の6年間が対象期間で、フィリピンの国家経済開発庁(NEDA)と中国側の代表者が共同で策定し、来年3月までの取りまとめを目指す。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月に中国を訪問した際に署名された覚書の内容を着実に履行するのが目的だ。

 同大統領は10月の訪中時、観光や農業など多分野にわたって13の合意を中国と結び、総額240億ドル(約2兆6942億円)の経済協力を取り付けたほか、民間金融機関からの30億ドルを含む総額90億ドルの融資の約束も引き出したとされる。

 中国側との交渉に当たり、南シナ海での中国の主権主張を認めないとする7月の仲裁裁判所の決定にはほとんど触れなかったもようだ。フィリピン政府の外交筋によると、同大統領は領有権をめぐる争いを両国間の議論の中心にすれば他の分野の協議にも支障をきたすと考えているという。

 この外交筋は、領有権については話し合いを継続するものの、場合によっては22年までの同大統領の任期中には解決しない可能性も示唆した。

 フィリピン政府は、NEDAの投資調整委員会(ICC)を中国との経済協力の窓口とすることを決定した。今後は中国政府にも同様の窓口を設置するよう要請し、両国政府間の関係を緊密に保つ考えだ。(シンガポール支局)