「海外に活路を見いだすのも道」
減少の一途をたどる日本国内とは対照的に、アジアの仏教国では派手な金色装飾の宮型霊柩車が脚光を浴びつつある。モンゴルでは「走る寺」と歓迎され、社会主義時代に寺が破壊されるなど迫害を受けた仏教のイメージアップにも寄与しているという。
日本葬送文化学会会員で葬祭業者「アラキ」(千葉県八街市)の荒木由光(よしみつ)社長(68)は平成15年以降、中古の宮型3台をモンゴルの国営葬儀社に寄贈。学会のモンゴル視察で、ある僧から「あの宮殿のような車を譲ってほしい」と言われたのが始まりだった。
同国は土葬や風葬が根付いていたが、当時は墓地不足などから火葬が見直されていた。ただ、棺を積む車は軽トラックと簡素なものしかなく、「金ぴかの宮型が死者を盛大に弔う同国の国民性と合致したのかも」と荒木社長は振り返る。
当時、ウランバートル市長から感謝状を受けるなど自治体にも歓迎され、マスコミ取材も殺到。現在、寄贈を受けた国営葬儀社では宮型から予約が埋まっていくほど人気だという。
同社は26年、仏教国ラオスにも宮型1台を寄贈。荒木社長は「宮型がなくなることは日本の葬送文化の喪失。海外に活路を見いだすのも道だ」としたうえで、「いつからか日本人は身近な人の最期を盛大に弔わなくなった。宮型に目を向け、多くの人にいま一度、葬儀のあり方を問い直してほしい」と訴えた。