
EUと中国の経済会議の際、ジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長(左)とエスコートする中国の李克強首相=2日、ブリュッセル(ロイター)【拡大】
【ベルリン=宮下日出男、ロンドン=岡部伸】欧州連合(EU)のトゥスク大統領らと中国の李克強首相は2日、ブリュッセルで首脳会談を開いた。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」履行に向けた結束を確認する見通しで、米国が協定離脱しても残る参加国を取り込み、気候変動への対策を推進する構えだ。
メディアによると、双方の首脳は会談に合せた声明で、パリ協定は「歴史的な成果」であり、その実行は「最高度の政治的義務」と強調。脱炭素化や環境技術の一段の開発、途上国の取り組みの後押しなどで連携を図る方針をうたう。
米国は協定の再交渉を目指すが、協定は欧州が主導する形で長年の難交渉の末にようやく実現。2020年からの本格実施に向け、具体的なルール策定の交渉が進む最中だ。独仏伊首脳は1日の声明で「新たに交渉はできない」と拒否。メイ英首相も「失望」をトランプ米大統領に伝えた。
ただ、残る参加国が結束しても、米国の離脱による影響は大きい。途上国支援への基金に対する米国の拠出分の確保は大きな課題となり、米国の協定参加や経済支援を前提に、温暖化対策の取り組みを受け入れた途上国の機運もそがれかねいとの懸念は強い。
一方、温暖化対策では今後、最大の温室効果ガス排出国の中国の発言力が増すとみられるほか、技術やインフラの提供などを通じてアフリカなど途上国への影響力をさらに拡大する可能性もあり、米離脱で「勝者は中国」(ロイター通信)との見方も出ている。