だが、栃木工場はその過酷さよりも「再び、日産のシーマをつくれるようになる喜び」(黒澤良二工場長)が何よりも優先した。苦労を厭わず、開発の要求に次々と応えていった。
特に塗装では、塗装の下塗りと上塗りの間に、手作業で塗膜の平滑性をあげる「水研ぎ」という工程で、艶のある塗装を開発チームが提案し、工場も了承した。
そして工場側の熱意に技術陣は驚く。製造ラインのレールからシーマを外し、水研ぎを40分もやるというのだ。それも高度な技術を持つ技能者「匠(たくみ)」を1台当たり2人も張り付けるというものだ。
さらに、静粛性を保つための吸音材のはめ込みなども通常では取り組めないような精度の高さで工場が取り組んでいった。検査工程もトータル4時間かけて、外装、内装、走行時の静粛性などを検査し、匠の資格を持つ検査員が張り付いて担当するなど、最高品質を生産現場の人の手によって追求した。
この熱い心に支えられた高い品質は早くもシーマファンの心をとらえた。受注は発売1カ月で1000台と、年間販売目標の半分に達した。5代目シーマは、日産を象徴するフラッグシップとして新たな歴史を刻み始めた。