後日、上林春松本店代表の上林秀敏氏に新商品開発への参画を正式に要請した。秀敏氏は450年の歴史を背負い「コカ・コーラという誰もが知る企業との非常に大きなビジネス。私たちに体力はあるのだろうか」と悩んだという。答えはすぐには出せない。
父親である14代上林春松に相談したところ「いい」とも「だめ」ともいわず、ただただ家の歴史を語り続けた。その時の父の真剣な表情に心を打たれた秀敏氏は「自分も新しいことに挑戦してみよう」と奮い立つ。自分も、上林家の歴史に新たなページを刻めるかもしれないと考え、プロジェクトへの参加を決めた。
秀敏氏は早速、日本コカ・コーラの工場を見学し、茶葉の選定や「合組(ごうぐみ)」と呼ばれる茶葉のブレンドで伝統技術を提供した。にごりのもととなる抹茶も、上林春松本店が認定する。一連の過程では、伝統を毀損(きそん)しかねないリスクを負う上林春松本店と安定的大量生産が使命の日本コカ・コーラとの間で、議論はときに白熱。互いの限界をすり合わせていった。
このころ、にごりのある飲料は未経験である生産工場でも戦いが繰り広げられていた。「オリンピックに出るより難しい」。誰かがつぶやいた。試作するも想定通り抹茶が製造機械につまってしまう。洗浄も一苦労だ。R&Dセンターの足立氏をはじめプロジェクトチームも工場に頻繁に通い、徹夜で抹茶をふるい続けたこともあった。