海水や海砂を使う高強度コンクリートの開発に成功した大林組の金井誠副社長=東京都清瀬市の同社技術研究所【拡大】
タブー覆す試行錯誤
しかし、業界のタブーという認識は社内も同じ。「そんな常識外れなことは無理」と技術研究所のスタッフを含め、誰も話に乗ってこなかった。それでも「技術的にも駄目だという納得できる理由がない限り、諦められない」と思った金井は、本社ビルの1階下のフロアで働いていた当時の主任技師、青木茂(64)に声をかける。
金井は「さびて鉄筋が膨張するのが問題ならば無筋にすればいい。さびない炭素繊維のロッド(棒)を鉄筋の代わりに使う手もある」と、1カ月かけて説得。当初は渋っていた青木が折れ、頓挫しかかった技術開発は金井と青木の二人三脚でスタートを切る。業界のタブーを覆すための「再挑戦」の始まりだ。
進捗(しんちょく)具合を毎日確認する金井の思い入れの強さにプレッシャーを感じながらも、青木は研究を進めていった。