海水や海砂を使う高強度コンクリートの開発に成功した大林組の金井誠副社長=東京都清瀬市の同社技術研究所【拡大】
廃棄物に由来する高炉セメントと、天然の海水という2つの安価な素材の組み合わせで強度を持つコンクリートが生まれた。金井は「金やマグネシウムなど、海水にはさまざまな成分が入り込んでおり、塩を入れただけの人工海水にはない働きをしたに違いない」と推測する。
さびを防ぐために混ぜた防錆(ぼうせい)剤が「強度をより高める効果を発揮した」ことも、技術研究所の主任技師でコンクリートのエキスパート、竹田宣典(53)の分析で分かり、実用化の道が一気に開けた。
当初は「金井がやっている『家内(かない)』工業」と自らが揶揄(やゆ)するような貧弱な態勢だったが、竹田もチームに加わり、10年11月ごろ、研究成果が形となるまでにこぎ着けた。
もともとは、放射性廃棄物の処理に役立つ技術を模索して着想した海水練り・海砂コンクリートだったが、震災を機に復旧・復興に欠かせない技術として図らずも用途が広がる。