完成後、開発陣からは、「ホンダの底上げにつながる」「社内外のヒエラルキーを変えた」と自信に満ちあふれた言葉が飛び出した。板井さんも「世界で一番売れるSUVになるかもしれない」と自信を隠さない。
この自信作は社内でも評判を呼び、めったにほめない経営陣も、「いいな、このハンドリング」「『このクルマ、何もいわずに乗ってみな』と役員同士で勧め合っていた」と絶賛する。デザイン評価に至っては、6人の地域本部長はたった3分で、「問題ない。このまま行け」とゴーサイン。過去最短の記録を樹立した。
「(08年秋の)リーマン・ショック後、ホンダは長らく低調な時代を過ごしてきた。内向きの仕事ばかりで、ホンダの発信力が下がってきていた」(板井さん)という、社内の暗い雰囲気はすでに払拭された。
フィットとともに狙うのは、トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「プリウス」の牙城を奪うこと。実は、競合には見えないが、「HVの新しい形としてプリウスからの乗り換えを促したい」と意気込む。これまで燃費を重視したユーザーに、「生活にゆとりを感じていたい客の夢を乗せ、走り出す」との思いが込められている。