音量をゼロにして遊ばれることも少なくないDS向けのソフトでありながら、音声にもこだわり、大泉洋さんや堀北真希さんといった有名人を声に起用し話題を作った。最初に予定していた路線が無理だと分かったら、その場で即座に路線を変更していけたのも、日野社長がクリエイターでありながら経営者でもあったから。タイミングを外さない企画力と、最大限の可能性を目指す実行力、難局を乗り切る判断力が、帝王判断に結果を与えた。
サッカーが題材となった「イナズマイレブン」シリーズでは、「アニメや他メディアのクリエイティブへの介入」を、出資者であり原作者としての強みを押し出して積極的に行った。「ゲームの都合でキャラを出したり、物語から消したりとアニメのストーリーをいじった。アニメに好きにやってと言わず、最後まで食い下がって作っていった」という。
この作品が成功したことで、周囲も任せておけば間違いは無いと考えるようになり、新シリーズでは日野社長に全権を預るようになった。それが「妖怪ウォッチ」だ。「まわりの理解が高く、楽しい記憶しか無い」というこの作品で、日野社長が追求したのが「番組構造への新提案」。アニメでは、何十話にも及ぶ放送をひとつのストーリーに沿って描いていくものもある。日野社長は「妖怪ウォッチ」で「オムニバスにすること、ストーリー内ストーリーを作ることを」を求めた。