開発は当初から困難の連続だった。メーカー以外の企業がパソコンを製作する場合、設計を製品化してくれる製造委託先が不可欠だが、冨田さんが同年4月ごろから中国や韓国など約10社の製造委託企業に協力を呼びかけたところ、次々と門前払いを食ってしまう。それから数カ月は、依頼を断られてはネットなどで次の企業を探す、という日々が続いた。
助け船は意外なところから現れた。新人社員の畑山優貴さんが同年7月、冨田さんのパソコン画面を偶然眺めた際、見覚えある企業が交渉リストにあるのに気づく。数週間前、担当者と名刺交換した台湾の製造委託大手「ペガトロン」だった。
「冨田さん、この企業紹介できますよ」。畑山さんの仲介で交渉が始まり、約3カ月で製品仕様が固まった。
製造委託先が決まった後も、コンパクト化の鍵となる折り畳み式キーボードの開発に約1年を要した。キングジムがペガトロン側に求めたのは「1日10回開閉しても5年間は壊れない」という計約2万回の開閉に対する耐久性。加えて、動きのスムーズさやキータッチの感触にも妥協しないという徹底ぶりで、ペガトロン側も音を上げかけた。