だが、冨田さんとメカ担当の平山昌俊さんは台湾に足しげく通いながら、ペガトロン側と粘り強く意思疎通を図った。試作品ができては送り返すという作業をしばらく繰り返すうち、「日本メーカーの考え方が伝わった」(平山さん)。最終的には4回目に台湾から納得いく試作品が送られてきた。
14年末には、8インチディスプレーの調達難で開発がストップするアクシデントにも見舞われたが、新たな供給先を探して量産化にこぎつけた。
携帯性を重視して機能を絞り込んだことで、思わぬ副産物も得られた。処理エンジンに廉価なAtomを採用したところ、ソフトウエア担当の伊吾田文彦さんが気づいた。「消費電力が少ないから電源も簡素化できるのでは」。こうして採用されたのはスマートフォン用などに使われる小型USBによる給電方式で、スマホと電源アダプターを兼用させることが可能になった。出張では荷物を減らせるメリットにつながる。
これまで個性的な商品を生み出す「ニッチ戦略」を売りとしてきたキングジム。ポータブックの開発当初、社内には家電メーカーがしのぎを削るモバイルパソコン市場への参入を疑問視する空気もあった。だが、開発が進めば進むほど個性に磨きがかかるポータブックに対し、いつしか社内評価も変わっていったという。