フィギュアスケートの羽生結弦選手の勝負曲として注目を集めたロックバンド「ONE OK ROCK」の初期のマスタリングも担当。「“真実”の音に近づこうとするかなり純粋な作業」(熊野社長)を極める中で、音響ケーブルなどに独自の工夫や開発を重ね、「この技術を生かせないか」と考えたのがPHONONの始まりだった。
個人でもパソコンを使用しての音楽制作が容易になる中、いまだに高額の資金が必要となるのはスタジオ代だという。「正確に調整された音響がない場所で作った音はゆがむ」(熊野社長)のだ。
そこで「音楽制作がもっと個人にも身近になれば」と目指したのが、「これさえあれば掌に高級スタジオと同じ音が手に入るヘッドホン」だった。
制作に協力したのは、熊野社長自身が技術開発をする中で知り合った、大手音響機器メーカーの元取締役ら、昭和期の日本のオーディオブームを支えた技術者たちだったという。
定年退職後に技術をもてあましていた技術者のアイデアを結集させて制作されたのが、現在の看板商品であるヘッドホン「SMB-02」のプロトタイプだった。
SMB-02は、スタジオモニターの定番ヘッドホンより約1万円高い。それでも評判は販売員らを通じて徐々に伝わり、米紙ニューヨーク・タイムズでは「ヘッドホンの聖杯」と絶賛された。「こんなに思い通りの音が出るなんて」と涙を流したアーティストもいたという。
一度音を聴くとその広がりと透明感に驚く。ヘッドホンにもかかわらず、スタジオの真ん中に立っているような四方から音が迫ってくる感覚を覚えるのだ。