「高橋さんは今、何を守りたいんですか?」
「そんな難しいこと聞かんといて。僕は橋下徹(前大阪市長)ちゃう。聞かんといて」
ここで橋下氏の話題を持ち出すこと自体、意味不明である。報道陣とは、質問をはぐらかすばかりの不毛なやりとりが続くようになった。
やがて事態は、液晶事業にとどまらずシャープ本体への出資=経営の禅譲へとつながっていく。もはや、シャープの経営そのものがシャープ単体ではコントロール不能となっていたことの証左でもあった。
副社長の頃が楽だった
紆余(うよ)曲折を経て、シャープは鴻海からの出資、子会社化が決まり、今は振り込みを待つばかりとなっている。
決して高橋氏だけに経営責任があるわけではない。町田氏の社長時代に液晶の拡大路線がとられ、片山氏の時代に堺工場への巨額出費で経営が傾いた。それに対して、奥田氏はリストラ以外の策を打ち出せず、高橋氏は応急処置は行ったものの抜本的な処置には踏み切れなかった。4代にわたる社長の複合的な失策が今日の事態を招いた。