今年5月の決算会見。「シャープの歴史の中で何が間違いだったと思うか」との質問に対し高橋氏は、「野球の解説者のようにあれがいかんかったとは言える。だが、自分がそこに身を置いたらどうだったかを考えなくてはいけない」と前置きした上で、次のように語った。
「その時に身を置いている人間からすれば正しくても、後からすれば間違いということがある。結局は、成功し続けなくてはいけない。一つ大きな失敗をしたら全部ふっとぶ。非常につらい。『何が間違いだったか』に答えられる人はいない。それが私の本音でございます」。まさに、偽らざる本音であろう。
運の要素も多分にある。日本電産の永守重信会長兼社長は記者団に対し、「リーマン・ショックや超円高がなければ、シャープは6兆円企業になっていたかもしれない」と語っている。経営は一寸先は闇だ。ただ、その責任を負わなければならないのが経営者でもある。
「副社長の頃が楽だった。社長がこんなにしんどいとは思わなかった」。25年8月のある日、高橋氏自ら記者につぶやいた言葉である。その重責から解放された今、何を思うのだろうか。