【田原】開業しなかった?
【田口】はい。ティーカフェは断念して、一度就職することにしました。最終的には意見が分かれたものの、ビジネスのプロの指摘に説得力があったこともたしかです。自分にはビジネスの経験が圧倒的に足りない。2~3年働いて実務を学びたいと思って、ミスミで働き始めました。
【田原】ミスミは何の会社ですか?
【田口】カタログ通販の会社です。一般的な会社は開発や販売など部門が分かれていますから、最初に営業に配属されると、3年は営業しかできなかったりします。一方、ミスミは1つの小さなチームで、商品開発から販売、物流、コールセンター管理まで、ビジネスの川上から川下まで経験できるので勉強するにはもってこい。面接で「3年で辞める」と言って入社しましたが、短期間でいろいろ学べたので、実際は2年で辞めて独立しました。25歳のときです。
【田原】ティーカフェで独立ですか?
【田口】いや、まずは資金づくりをしようと考えていたので、業種にはこだわりませんでした。たまたま不動産屋さんが集客で困っているのを知って、不動産賃貸の一括見積もりサービスを始め、それから発展させて無店舗型の賃貸仲介もやりました。
バングラデシュで革製品をつくる
【田原】そこから社会起業に舵を切ります。きっかけは何ですか?
【田口】不動産仲介をやっていると、外国人のお客さまからの問い合わせがけっこうあります。ただ、部屋を仲介しようとすると、大家さんが「外国人はルールを守らない」「臭いが気になる」と言って拒否をする。とくに困っていたのは留学生です。会社勤めの外国人は会社が契約者になってくれるのでまだいいのですが、留学生はそれも難しく、先輩の部屋に転がり込むしかない。ドアを開けたら外国人が10人いたという話をよく聞きますが、彼らが望んでそうしていたわけじゃないんです。
【田原】それで?
【田口】僕らが部屋の借り主になって契約し、又貸しする形なら、大家さんも説得できる。ただ、単に又貸しするだけではおもしろくありません。日本語学校に話を聞きにいくと、日本人と友達になりたいという声がとても多かった。そこで、日本人と外国人が一緒に暮らすシェアハウスをつくりました。