九州電力の川内原発=1月、鹿児島県薩摩川内市【拡大】
原子力規制委員会が16日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の「審査書案」を了承したことで、川内原発は再稼働へ向け動き出すことになった。経済活性化に向けて地元からは歓迎の声が上がっているが、なおも安全性を不安視する住民もいる。新規制基準の「合格第1号」に、ほかの原発立地地域も今後の動向を注視している。
宿泊客の激減限界
「九電が審査合格のため積み上げてきた努力の結果だ。うれしいの一言」。薩摩川内市ホテル旅館組合の福山大作組合長(63)は喜びを隠さない。
宿泊客の大半は原発関係者だったが、東日本大震災後、再稼働の見通しが立たず宿泊客は激減。3年間で加盟していた旅館3軒が倒産した。「我慢を重ね、皆でなんとかここまでやってきた。早く再稼働の手続きを進めてもらいたい。本音としては『明日にでも再稼働』だ」と話した。
薩摩川内市の岩切秀雄市長は16日の記者会見で「国が決めた基準で審査した結果なので安全だと思う」と述べ、原発の安全性が担保されたとの認識を示した。
「対策追いつくか」
今後、再稼働の実現には地元同意というハードルが残る。
川内原発から半径30キロ圏内に住む日置(ひおき)市の自営業、町田博文さん(63)は「天災は計り知れないことが起こり得る」と安全性を懸念する。30キロ圏に一部地域が入るさつま町の担当者は「まだまだクリアする課題は多い。国の計画に合わせて頑張って対策を進めるしかないが、追いつくだろうか」と漏らした。