ASEANのある国の公的機関でデザイン戦略を担当する人間が語った。「イタリアよりフィンランドや英国の方がデザインは進んでいるね」と。
ぼくは、「確かにそれらの国ではデザインの考え方を広めるとか、どう応用するかについて熱心だ。しかし、テキスタイル、ファッション、雑貨、家具から自動車に至るまで産業として成り立っているイタリアを遅れていると見なすような考え方をしていると、おたくの国の産業にデザインが活かしきれないと思うよ」と答えた。
この時、一つのエピソードを思い出した。日本のクルマのエンジニアが中国の自動車メーカーは日本の先端技術ばかりを欲しがると困惑していた。10年以上前の話だ。「自分たちで図面をひいてきたぼくたちが助けてこそ、先端技術が使えるわけだけど、表現は悪いが、今の彼らには豚に真珠だ」と悪態をついたのだ。
新興国が何かの分野で先進国に追いつきたい場合、先進国にあるトップのものを取り入れようとする。心情的にはとてもよく分かる。しかし、もともと時と共に歩んだ経緯あっての「先端」である。そのまま持ち込んでも、現実では機能しないことが多い。
先週、イタリアデザインの歴史を辿りながら生産や販売の現場に足を運び、「デザインの位置」を考えてみた。