「そやな、家に居づらいことはないねんけどな。孫が大切にしてくれますねん。病院は隣のベッドが近いから、せきも3回に2回にしとこうと思ったりするしな」
男性の心を見透かしてか、妻が会話に割って入った。「訪問入浴も訪問看護も来てくれるし、できるだけ家で診てもらったらいい。娘も帰ってきてくれると言ってるさかいに、できるだけ家におったらいい」
男性宅ではその夜、同居の息子がベッドの隣に布団を敷いて寝た。親子で「最期をどこで迎えたいか」を話し、約1カ月後、男性は家族に囲まれて家で息を引き取った。
最期に過ごしたい場所を患者に聞くと、最初は「病院で」と答える人が多いという。元気なときも含めて、この質問を何度もする花戸医師は、それを「家族への遠慮から発している」と言う。
「奥さんや息子の嫁に自分の下(排泄(はいせつ))の世話をさせるのは申し訳ない、共働きの息子夫婦に迷惑をかけたくない。だから、皆さん『病院で』と言うのです。しかし、『家族に負担がないようにします』『下の世話はヘルパーに任せてください』『何かあったら診療所にいつでも連絡してください』と説明すると遠慮が薄れ、本音を話してくれます」