でもその後、新宿副都心に超高層ビルが林立し、池袋にも高さ240メートルのサンシャイン60が登場。東京タワーの存在はかすんでいきました。
東京タワーを運営する日本電波塔の当時の社長、前田福三郎さんが私のデザイン事務所にいらっしゃったのは、ライトアップが始まる2年前。「照明を考えてください」。ライトアップが何か、まだ日本でほとんど知られていない頃です。
東京タワーに照明が全くなかったわけではありません。塔の稜線(りょうせん)に沿って電球がポツポツと付いていたのですが、ところどころ切れている。これは寂しい。いろんな場所から塔を観察するうち、強く思ったんです。「昼より夜の方がきれい」って言われたい、と。
パリのエッフェル塔に比べ、戦後の資材不足の中、鉄材をかき集めてつくった東京タワーは骨組みが華奢(きゃしゃ)。日本には台風や地震の危険もあるし、照明設備に過大な重量はかけられない。苦労しつつ、鉄骨の内側に投光器を取り付けて照らし上げました。貴婦人が裳裾(もすそ)を広げたような、美しい構造を見せるためです。