介護職の賃金を上げたけれど…「配偶者控除」の壁 矛盾する働く時間減少 (1/5ページ)

2015.9.13 17:10

家での介護は訪問ヘルパーに支えられている=東京都葛飾区

家での介護は訪問ヘルパーに支えられている=東京都葛飾区【拡大】

 深刻な介護職不足のなか、政府は介護職の処遇改善を目指し、賃金アップの旗を振る。しかし、非常勤の女性パートが多い訪問介護の現場では、時給を上げると、労働力が減るという不思議な現象が起きている。夫の「配偶者控除」に収まるよう、働き方を調整するためだ。制度の見直しを求める声も上がっている。(佐藤好美)

 なかったことに…

 介護・医療事務の大手、ソラスト(東京都港区)。年末を控えた時期になると、非常勤で働くスタッフから毎年、何件か嘆願が来る。

 「時間調整の計算を間違えた。残業した分は、なかったことにしてほしい」

 「予想より昇給していた。年収が配偶者控除の範囲を超えないよう、働いた2時間分を取り消してほしい」

 介護事業本部のシニアディレクター、佐藤壮一郎さんはため息をつく。「企業としては、働いたのに、働かなかったことにはできない。事前に注意喚起をしているんですが…」

 同社の介護職は全国で2500人。非常勤職員は6割で、ほとんどが年収103万円以内で働く訪問ヘルパーだ。収入がその範囲内なら、夫が課税所得を38万円減らせる「配偶者控除」を受けられる。

「103万円」は女性が働き方を決める一つの目安

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