内面を考えながら
最後まで笑み一つ浮かべない、自分とは正反対の汐璃の役作りに剛力は手を焼いた。撮影の序盤、汐璃を男らしく見せようと、意識して声を低くしたり、歩き方や座り方を荒っぽくしたり、巨大企業の経営者らしい貫禄たっぷりの所作を心がけたりしてみたが、見た目に重点を置いた試みは結果的に上滑りに終わった。両監督からは「汐璃の気持ちを大切にしてお芝居をしてほしい。男らしさを意識するあまり、せりふに感情が宿っていない」と指摘されてしまったのだ。
そこで剛力は、違うアプローチで臨むことにした。自分なりに考えた汐璃の感情をカメラの前にそのまま出し、女性でありながら男性でもある汐璃その人の強さや弱さをあるがままに表現できればいいと、大きくかじをきったのだ。「私は楽しいことや笑うことが大好きなので、そうした感情を忘れてしまった人物を考えると切なくなってしまうんです。そんな汐璃をどう表現すべきかを考えたとき、なぜ女性が男性として生きなければならないのか、ということから自分に引きつけて理解しなければ、汐璃の素直な感情は出せないのではないかと。そこで、いつも心の中でそのことを考えながら演技に臨みました」。