町に繰り出せばいつもどこからかラテンのリズムが聞こえてくるサンティアゴ=デ=キューバ。楽しむことにかけては卓越しているキューバ人は、女性であれば必ず踊りに誘ってくれるので、1人参加でも大丈夫=キューバ(緑川真実さん撮影)【拡大】
しかし、私にとって「のんびりするしかない」などという言葉はうらやましいかぎりだ。でも実際、目の前にエンドレスに続く時間だけが用意されたら、何を考えるのだろうか。そこにあるのは、あきらめにも似たものなのだろうか。
自由よりも安心を選択する人もいる。観光客向けにサルサのレッスンの講師をしている20代のダンサー青年は、数年前にダンスフェスティバルでメキシコに行ったとき、チームの数人はそのまま亡命したと話した。「あなたは?」と尋ねると「ぜいたくはできないけど、最低限の暮らしは保証されているキューバを選んだ」と明かした。
サンティアゴ・デ・キューバは不夜城で、夜な夜な誰かが踊っている。ソン(キューバ発祥のラテン音楽)のリズムと甲高い声、それを支えるような太い声が響き渡る、蛍光灯2本で照らされた薄暗い空間。そこに人さえ集まれば、熱気は徐々に増し、ワクワクするようなパーティーが始まる。参加者は若者だけではない。ハリケーンで街灯が停電し、真っ暗な道を懐中電灯と杖を両手に訪れた初老男性は、小刻みにステップを踏み、かたっぱしから女性をダンスに誘う。若い女の子たちはセクシーなワンピースに身を包み、おめかししている。豪快な笑い声が、四方から聞こえてくる。