【KEY BOOK】「吉田一穂詩集」(加藤郁乎編/岩波文庫、798円、在庫なし)
入手しやすい一穂詩集は思潮社の現代詩文庫か、岩波文庫版だ。こんなふうにポケットに入る一穂がいるだなんて、羨ましい。そういえば、17歳の一穂が北海道をあとに東京に向かったとき、鞄に入っていたのは北原白秋の『桐の花』一冊だった。その思いは白秋のいた早稲田に直結し、白秋・三木露風・佐藤一英・横光利一・中山義秀らと交流するとともに、ケルト文学やダンセーニやエズラ・パウンドの熱中に向かった。これでもわかるように、一穂はつねに北方志向なのである。それをぼくは「詩魂のポーラリゼーション」と名付けてきた。人間の記憶の果てに眠る原形の思索に耽ること、それを凝縮した詩に集約すること、それが一穂の修行というものだった。