フリーの演技終了後、涙と笑顔を見せる浅田真央(まお)。ショートプログラム(SP)16位の衝撃から気持ちを切り替え、高難度の構成を演じ切った浅田には、しのぎを削ってきたスケーター仲間からも惜しみない称賛の声が上がった=2014年2月20日、ロシア・ソチのアイスベルク・スケーティング・パレス(大里直也撮影)【拡大】
まだ会場が熱気を帯びていない前半の12番滑走で、経験がないSP16位の悪夢を振り払った。冒頭に跳んだ一発の大技で演技に引き込んだ。「自分にしかできない」とこだわり続けたトリプルアクセルを完璧に着氷。五輪では1992年アルベールビル大会銀メダルの伊藤みどり(44)と浅田しか跳んでいない大技を、公式戦では約1年ぶりに成功させた。
「アクセルが決まり、『よし』って思った。緊張もあったが、このままいけると思った」
SPで大崩れした前夜は寝付けずに珍しく寝坊して練習時間にわずかに遅れた。待っていたのは、2010年秋から師事する佐藤信夫コーチ(72)の叱咤だった。「SPの得点は70点くらい。フリーは140点ある。まだ3分の1しか終わっていない。気合を入れなさい」。抜け殻だった心身にもう一度、闘魂が宿った。