前回バンクーバー五輪の銀メダリストで、世界選手権女王でもある。今季のグランプリファイナルも制した。6位は、到底受け入れられる順位ではない。
SPではトリプルアクセルで転倒し、その後のジャンプをことごとく失敗し、スケートも伸びを欠き、これが浅田だろうか、という演技で16位の下位に沈んだ。
「緊張をコントロールできなかった。体がついてこなかった」。SPの演技を悔やむ顔に表情はなく、ショックの大きさは痛々しくさえあった。翌日のフリーで浅田がどんな演技をみせるのか、想像するのが怖くさえあった。
現地でもテレビ桟敷でも、フリーの氷上に立つ浅田を見る視線は、応援でも頑張れでもなく、多くは「見守り」であったろう。
すべてのジャンプを成功させた。トリプルアクセルも舞うように降りた。切れ味鋭いステップにスタンドが沸いた。フリー自己ベストの得点でもメダルには届かなかったが、浅田の演技は見る人を感動させた。
札幌五輪のフィギュアで尻もちをつきながら金メダリストよりも記憶に残るジャネット・リン(米国)のように、浅田も長く人の記憶に残るだろう。皮肉にもそれは、SPの大失敗が作ったドラマだった。浅田はソチのメダリストにはなれなかったが、冬のヒロインとなった。