変化のうねりにあるキューバに寂しさを覚えるのは、一観光客の勝手な感傷に過ぎないが、初めて訪れた2003年の光景が懐かしい。
当時、必要最低限の日用品すら品薄で、お腹が空いても飲食店が少なく、質素な国営レストランを探すのに一苦労した。平等を実現するために払われる「不自由」という代償を身をもって知った。でも、私はこの国が大好きになった。
それは、物も情報も発展もない国では、「人の存在」が驚くほど濃かったからだ。何もないから、色や音が加わったんじゃないかというほど強烈な、人間から湧き出るパワーやエネルギーに満ちていて、一人として似たような印象の人はいなかった。まさに十人十色。その濃密ぶりが、今回はずいぶんと薄くなった印象だった。