首都ハバナの宿の1階で働いていた靴磨き歴54年のアンヘル。若い頃は柔道3段で、国の代表候補にも選ばれるほどだったが、腰を痛めて選手生活に別れを告げ、靴磨きになったという。「あの時は本当に悔しかったよ」当時の思いを噛み締めるように回想していた=キューバ(緑川真実さん撮影)【拡大】
それになによりも一文字一文字手書きで書かれた手紙を読んだのは久しぶりだった。一期一会は旅行の醍醐味(だいごみ)だが、発信される情報が少なく、コミュニケーション手段も乏しいキューバ人との出会いは特別だったと、日本に戻り、あらためて実感する。
約1カ月滞在した2回目のキューバ旅行。やはり、政治体制が特殊なことで、お国柄も生活事情も独特だ。滞在中に重ねて感じた、困難な状況をパワーの源に変えて楽しく過ごすしなやかな力強さと、素朴でてらいのないキューバ人の人柄は、最大の魅力だった。
≪「闘い続ける。それがキューバ人だ」≫
街灯がなく暗い通りをキョロキョロしながら歩いていると、「チーナ(中国人)! 道に迷ったの?」と声をかけてくれる黒人女性や、疲れたので道ばたに座り込み、再び歩き出すと「気分悪いの?」と心配してくれる中年女性。大きな荷物を持って宿に歩いて行く途中、「そんな荷物を持ってうろちょろしていたら、ヒネテロ(外国人旅行者をだますたかり屋)が寄ってくるぞ」と宿に電話をかけ迎えを呼んでくれた男性。キューバには、街のあちこちに思いやりがあふれていた。