首都ハバナの宿の1階で働いていた靴磨き歴54年のアンヘル。若い頃は柔道3段で、国の代表候補にも選ばれるほどだったが、腰を痛めて選手生活に別れを告げ、靴磨きになったという。「あの時は本当に悔しかったよ」当時の思いを噛み締めるように回想していた=キューバ(緑川真実さん撮影)【拡大】
東日本大震災の被害を心配する声を一番多くかけてくれたのも、キューバ人だった。
「地震は大丈夫だったか?」
「原発はどうだ?」
日々触れる情報量が少なく、同じ島国という共通点ゆえかもしれないが、彼らの気遣いを嬉しく感じた。
「bad time good face(苦しいときこそ笑顔で)」は、冒頭の夫婦がキューバ人を表現した言葉。外では楽しそうだけど、家に帰ると実際の生活は本当に「PROBLEMA(問題だらけ)」だと打ち明ける。彼らはアメリカに住む親族の仕送りでどうにか生活できるが、海外からの仕送りが止まったらこの国は飢餓で死んでしまう、なんて発言を聞くと問題の奥深さにはっとする。
最後の滞在地、ハバナで出会った74歳のバリエンテは、昨今の規制緩和政策で洋服屋を始めた一人。彼は実に力強く、誇らしく言う。