家の裏には養蜂箱が20個ほど並んでおり、川岸に作業小屋がある。
小屋に入ったイゴールは細々とした道具が並んだ一角に座り、ハチを落ち着かせる燻煙(くんえん)器に火をつけた。
迷彩服のズボンを脱ぎ、白いズボンにはき替える。薄い水色の長袖シャツを羽織ってボタンを首まできちんと締める。
白煙が漂う薄暗い小屋での一連の作業は、何だか神聖な儀式に向かう準備のようだ。
イゴールが燻煙器を手に数ある養蜂箱の一つに歩み寄り、蓋を開けた。するとそこには、鮮やかなレモンイエローの巣が柔らかな弧を描いてたれさがっているではないか。話に聞いた通りだ。これが野生ミツバチの巣か。
正確な六角の小部屋がこれまた緻密に並び、大小5つほど層になっている。少し崩れた巣の一角からはとろりとした蜜がのぞく。光り輝く蜜はもちろん、ハチの巣自体もおいしそうだ。