クワッ、クワッ、キャキャッ。
流氷の広がる根室海峡にオオワシの甲高い声が響く。
上昇気流を受けて青空高く舞うもの。急降下して魚をつかむもの。それを猛スピードで追い、空中で鉤爪(かぎつめ)を伸ばして奪おうとするもの-。オジロワシと合わせて700羽ほどの海鷲が知床半島羅臼付近に集まり、厳寒の氷海で熱い戦いが繰り広げられている。
知床半島と国後島に挟まれた海峡には1月頃から流氷が流れ込み、2月から3月にかけて白い流氷原が帯のように広がる。海鷲はオホーツク海を南下してくる流氷と同様に、北方のサハリンや千島方面から長い旅を経て渡ってくる。そして餌の魚やねぐらとなる樹林に恵まれた半島付近でひと冬を過ごす。寒風吹きすさぶ空と、流氷に覆われた海。冬だけに現れるこの風と氷雪の世界に、オオワシはつくづくよく似合う。
オオワシは翼を広げると最大約2.4メートル。体長約100センチ。オジロワシよりひと回り大きく、海鷲の仲間では最大の体格だ。さらにそのデザインが目を引く。氷海に灯をともすような黄色のくちばし。肩と尾の白羽根が黒褐色の体に鮮やかなコントラストを描く。風に乗り自由に飛翔(ひしょう)する姿は、まさに氷海の王者の風格が漂う。