毎年冬、羅臼の沖には流氷と海鷲と人の旅が交差する。圧倒的な氷海に抱かれ、普段は会えない鳥と人に出会う。冬の祭りのようなひと時。冬は長いようで短く、輝く出合いは一瞬だ。オオワシの姿を追うごとに、私は氷海での時間がかけがえのないものに思えてきた。
羅臼には風速30メートルを超える嵐が何度か過ぎて、いつしかオオワシの北帰行が始まった。
春が近い。(写真・文:写真家 伊藤健次/SANKEI EXPRESS)
■いとう・けんじ 写真家。1968年生まれ。北海道在住。北の自然と土地の記憶をテーマに撮影を続ける。著書に「山わたる風」(柏艪舎)など。「アルペンガイド(1)北海道の山 大雪山・十勝連峰」(山と渓谷社)が好評発売中。
<取材協力> 知床ネイチャークルーズ www.e-shiretoko.com/