聖域に立つ
他方、ゴームリーが自分のからだを型取りした人体彫刻は、ふつうの屋外彫刻では到底ありえない、岩場の厳しい突端に据え置かれている。ここが聖域であることから、作品の設置をめぐって賛否が闘わされていると聞いたが、私が見たかぎり、彫刻は聖域を汚すどころか、その峻険(しゅんけん)さをむしろ際立たせている。ぜひ恒久的な設置とし、多くの人々を半島に招き入れる礎となってほしい。
設置にあたっては、難所ゆえ一度はヘリコプターでの作業をあきらめざるをえなかったという。が、代わって地域の名産で知られるしいたけ農家の方々が、日ごろ長(た)けた魚釣りの技を駆使して岩場までケーブルを張り、みごと実現に漕ぎ着けた。秋には複数のバス・ツアーを組んで国東半島をめぐるアートの旅が実現すると聞くが、季節のおりごとにこれらのプロジェクトは容貌を変えながら、時を選ばず来客を待っている。(椹木野衣/SANKEI EXPRESS)