ロシアによるクリミア併合を変更させる手段は軍事介入しかない。今回の日米共同声明をロシアは、「米国がクリミアの現状を認めざるを得なくなった」と認識している。
(4)のような「ロシアに対し、ウクライナにおける緊張緩和を強く求める」という抽象的文言はロシアに対して影響を与えない。米国やEU(欧州連合)は、ロシアのプーチン大統領に近い政権幹部や実業家に入国禁止、資産凍結などの追加制裁を発動したが、ロシア人エリートの性格を考えた場合、制裁を科された人々の結束を強めるだけなので、ロシアと西側の緊張緩和には逆効果だ。
経済支援は必要最低限に
米国の対露制裁は、典型的な戦力の逐次投入に陥っている。プーチン政権に本格的な圧力をかけるためには、ロシアからの天然ガス、石油の輸入禁止措置を取るしかない。ヨーロッパ経済は大打撃を受けるが、これ以外にウクライナ問題の変更をロシアに迫る非軍事的措置はない。ロシアは、米国のオバマ政権にはそこまで踏み込む腹がないと軽く見ている。
日米首脳会談後も、ロシアの安倍政権に対する評価は変化していない。クレムリンは、日本の対露制裁が常に米国、EUの後で行われていることに注目している。この順番が変わらない限り、プーチン政権の安倍政権に対する信頼感に変化はないと思う。ただし、ウクライナに対する日本の経済支援については要注意だ。日本の支援を利用して、ウクライナが武器購入や傭兵の確保などを行うならば、ロシアは態度を硬化させる。