ウクライナの親露派勢力は、ロシア政府の統制に服していない。トゥルチノフ大統領代行は、元保安庁(秘密警察)長官で、CIA(米中央情報局)、SIS(英秘密情報部、いわゆるMI6)とも良好な関係を持っている。権力基盤が弱いウクライナ暫定政権としては東部、南部の状況が混乱し、ロシア軍が介入することは、決してマイナスではない。なぜなら、そのことによってロシアによる侵略を国際社会に訴え、米国、EU(欧州連合)などから政治的、経済的、軍事的支援を得ることができるからだ。プーチン氏は、ウクライナ暫定政権のこのような意図を見抜いている。
ロシアによるクリミア併合はウクライナの主権に対する侵害で、国連の基本的枠組みを崩しかねない暴挙だ。日本を含む国際社会がロシアを非難し、制裁を加えるのは当然のことだ。しかし、暫定政権に異議申し立てをする東部、南部のロシア語を常用するウクライナ国民やロシア国籍保持者を、「テロリスト」と決めつけ、掃討作戦を展開するトゥルチノフ大統領代行らも、国際的な人権基準に反する人々だ。ウクライナ暫定政権の危険性を過小評価してはならない。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)