厚生労働省は6月3日、公的年金の長期見通しを試算した財政検証結果を公表した。働く女性や高齢者が増え、経済が成長する標準的なケースで、現役世代の手取り収入に対する厚生年金の給付水準(所得代替率)は、現在の62.7%から2043年度に50.6%となり約2割目減りする。それ以降は固定され、04年に政府が公約した所得代替率50%は維持できる内容。一方で、低成長なら所得代替率は50%を割り込むことも明記、年金制度の安定には日本経済の成長が欠かせない実態が浮き彫りになった。
名目成長率1.6%必要
厚労省は社会保障制度改革国民会議の報告書を踏まえ、通常の財政検証に加え(1)人口減少などに応じて給付を抑制する「マクロ経済スライド」を強化(2)保険料拠出(納付)期間延長(3)厚生年金の加入拡大-の3種類の制度改革を実施した場合の影響(オプション試算)も発表。いずれも給付水準が向上するとしており、厚労相の諮問機関である社会保障審議会年金部会で制度改正を視野に入れた議論を本格化させる。