日米独の大企業がフランスの重電大手「アルストム」をターゲットにした激しい買収合戦を展開している。狙いはアルストム社のエネルギー分野。新興国などで急成長が見込まれるほか、先進国でも次世代送電網整備などの需要があり、各社とも事業規模拡大が急務なためだ。
一方、自国の基幹企業であるアルストムを簡単に手放したくないフランス政府も買収交渉への関与を強めようとしている。総額1兆円を超える超大型買収案件は、多くの思惑が絡み合い複雑な様相を呈している。
GE参入阻止狙う
今回の買収合戦の火蓋を切ったのは、世界最大のコングロマリット(複合企業体)といわれる米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。4月末、アルストムが火力用の蒸気タービンや水力発電に強みを持ち、欧州だけでなく中東や南米など新興国にも販路を持つ点などを評価し、総額169億ドル(約1兆7200億円)で買収を提示した。