では具体的にどんな忍耐力を意味するのだろう。新政府軍を前にまるで打つ手なしの幕府の責任者にあって、勝が一見、ただひたすらに堪え忍んで、ときに同僚が仕掛けてくる激しい権力闘争をいなし続ける-、その卵を抱いたコウテイペンギンのような様を、玉木は指摘した。「勝はあえて何も考えていないふうを装っただけの話です。ちゃんと江戸城の無血開城へと向かって思考は進んでいます。もし勝が不安な表情を浮かべれば、周囲も不安に陥ってしまうでしょう。それが勝の男らしさであり、忍耐力です」。玉木はインターネットを通じて何でも情報が手に入る現代社会にも思いをはせ、「大切なものであればこそ、余計に手に入れるまでには我慢も必要」との考えを示した。
ただ、自分が忍耐の人かと言えば、それは状況次第だという。「押してもだめなら、引いてみることも必要だと思います。自分が興味あることへの最初の一歩を振り返ると、いつも自分でアクションを起こしています。頭で考えていても、何も進まないですよね」。趣味についても、自分に合っていれば続ければいいし、どこか肌に合わなければやめればいい。だから引き際はしっかりと見極めているそうだ。