【メジャースカウトの春夏秋冬】
安定しなかった制球
甲子園を沸かせた大物ルーキー、楽天の松井裕樹(ゆうき)投手に、光明がさしつつある。開幕当初は先発ローテーション入りしながら結果を出せずに2軍落ち。しかし、6月6日に再昇格を果たすと、7月2日のオリックス戦では中継ぎで好投して初勝利をつかんだ。オールスター明けの後半戦からは先発復帰も果たした。
ここまで苦しんだ原因は何だったのか。
初先発から3連敗した左腕は、打ち込まれたと思えば、制球を乱し、プロの壁に直面した。無我夢中で全力で投げているのだが、投球フォームに余裕がなかった。英語で「ポンプアップ」という状況で、力みによって制球が安定しなかった。
174センチとプロでは恵まれた体ではない。高校生が空振りしていたスライダーも、選球眼のいいプロからすれば、当たり前のボールの一つにすぎないというわけだ。
三振ラッシュで大きな注目を浴びた高校2年時から体も変化した。当時は体つきのバランスがよく、柔軟性もあった。コンパクトに腕を振る「クイックアーム投法」で、打者も打ちづらそうだった。