すごく自由だなと感じた
「繰り返し再演されてきましたが、本格的に戯曲に手を入れるということは今までなかったので、この作品をここまで掘り下げるのは12年ぶりでした。これまで、登美男は単純に優しすぎるあまり、人と接することが怖い青年だと描かれてきた。でも、今回改めて向かい合って、自分に優しくするために、人にも優しくしているだけなんだと気づいた。僕もだいぶ大人になって、登美男の捉え方も変わってきた」
戯曲でも小説でも、一貫するのは「なぜ人は外に出なければならないのか」という投げかけだ。「出ることが幸せだとはかぎらない、という思いがずっとある。その半面、外に出ることで不幸になる確率も多いけど、幸福になる確率も多い、とも思う。僕自身の経験から言えば、妄想の中で『傷つくかもしれない』と考えすぎて煮詰まってしまうよりは、外に出て実際に傷ついてしまった方がラクでしたね」