元気でいなくちゃ
「帰宅困難区域」に指定されている富岡町の小良ケ浜(おらがはま)地区で暮らしていた猪狩重信さん(89)は「『国破れて山河あり』なんて言葉があるけど、俺たちには山河すら残ってねぇ」と、つぶやいた。
富岡町の故郷は、一時帰宅するたびに変わり果てた姿になっていった。猪狩さんにとって故郷は「いつか戻る場所」ではなく「振り返る場所」になりつつあるという。
「最初はここで死にたくねぇなと思った。でも3年もたてば郡山の土地に愛着も湧いてくる。もう郡山で葬式場も予約してんだ」
原発事故の避難者たちは、自分たちの生活がこれからどうなるのか道筋がたてられないから、「諦め」が積み重なっていってしまう。
宍倉さんは「先が分からないからこそ、道筋がたてられないからこそ、富岡の人たちには笑顔でいてほしい。今元気でいなくちゃ、戻れるもんも戻れなくなる」と最後に話してくれた。