実際に近寄ってみると、最初は多少警戒してはいるものの、今まで遭遇したどのジュゴンよりも、その警戒心は何十倍も弱かった。カメラを向ける僕にちょっと背中を見せる程度で、逃げようとはしない。
それどころか、自分に害がないと認識したのか、慣れてくると向こうの方から僕の体に接触してくるばかりか、ドスドスと頭をおなかにぶつけてきた。さらにウエットスーツの上から甘噛みし始めたのだ。「こいつ大丈夫かな」と思い、よく見るとペニスを出していた。
「やや! これはちょっとやばいかも」と思い、少し時間と距離を置こうと、ビーチに向かって泳ぎ始めると、今度は向こうから追いかけてきて、同じことを繰り返そうとする。
≪500キロを泳いだ「あいつ」だったのか≫
こんな状態だから、思う存分撮影はできたが、気に入られ方が気に入らない。一緒に同行していた、現地のダイビングサービスのガイドには、そんなそぶりは見せていなかったのに。