DVDをエンドロールまで鑑賞し、停止すると、テレビで「知らない人のお宅の台所に突撃して、冷蔵庫を見せてもらう」というコーナーが流れていた。スーパーの出入り口で、買い物袋を掲げた気の弱そうな家族とリポーター役の若い女性タレントのあいだで押し問答が繰り返されている。
――本当に、ちょっとだけ、ちょっとだけお家にお邪魔させてもらえませんか?
――ええ、今からいきなり? 無理無理。
――そうですよねえ。でも奥さん、そこをなんとかお願いします!
――掃除してないから。散らかってるから…。
――そんなの全然、いいです。全然大丈夫ですから!
ずれた反応の言いぶんはなんだ
私はテレビを消すと、台所に行って夕食の準備を始めた。今日の献立は、久しぶりの鍋である。白菜の葉を根元から折り、水洗いし、まな板の上でざくざくと刻んでいると、さっきのリポーターの言いぶんに、なんだか納得のいっていない自分に気がついた。